一般皮膚科
一般皮膚科
皮膚科で治療する病気はたくさんあります。「皮膚」は人の表面にあるイメージからは、想像できないくらい奥行のある臓器です。「皮膚は内臓を映す鏡」とよく言われるほど、皮膚科はただ皮膚を診るのではなく、全身を診る科なのです。何気ない体調の変化が皮膚の症状として現れることもあります。内臓癌、肝臓病、膵臓病などの消化器・肝胆膵系疾患、糖尿病をはじめ甲状腺、副腎などの内分泌系疾患、心不全、動脈・静脈閉塞、血管炎などの循環器・血管系疾患、SLEや皮膚筋炎などの膠原病、腎不全・性病などの腎臓・泌尿器科疾患、種々の細菌・真菌感染症など、あらゆる内科系疾患が初期症状や随伴症状として皮膚に症状がでてくることが多くあるからです。
皮膚所見から内臓病変を予測できるというのは皮膚科専門医の大きな一つの醍醐味だと思っています。
皮膚科を受診される方のほとんどは一般的な皮膚疾患ですが、常にそのことを意識して日々の診療にあたっています。
これくらいは、そのうち治るだろうと我慢するのはやめて下さい。
皮膚科専門医に診断を受けて早めの治療をお勧めします。
このような症状の方はご相談下さい
小児からご年配の方まで皮膚疾患を幅広く診療しています。
皮膚の異常や気になる症状がある際は、何でもお気軽にご相談下さい。
湿疹 |
アトピー性皮膚炎、かぶれ(接触性皮膚炎)、手湿疹、皮脂欠乏性湿疹(乾燥性湿疹)、 |
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皮膚の付属器 疾患 |
にきび、あせも、多汗症、酒さ、円形脱毛症、男性型脱毛症(AGA) |
皮膚の細菌 感染症 |
蜂窩織炎、丹毒、猫ひっかき病 |
皮膚のウイルス 感染症 |
ヘルペス、帯状疱疹、手足のいぼ、尖圭コンジローマ、水いぼ、麻疹(はしか)、水痘(みずぼうそう)、風疹、手足口病、突発性発疹、伝染性紅斑(りんご病) |
皮膚の真菌症 | 水虫(足白癬)、爪白癬 |
その他の感染症 | 梅毒 |
手足にみられる 疾患 |
たこ、うおのめ、爪の変形(巻き爪、陥入爪、爪肥厚) |
外傷・刺激による 皮膚疾患 |
やけど、しもやけ、ひやけ、光線過敏症、痒疹 |
虫による皮膚疾患 | |
免疫が関与する 皮膚疾患 |
水疱症、乾癬、掌蹠膿疱症、膠原病、尋常性白斑 |
皮膚腫瘍 |
良性腫瘍(ほくろ、脂漏性角化症、脂肪種、粉瘤、稗粒腫、汗管腫、 |
皮膚の表面に起きる炎症をまとめて「湿疹」または「皮膚炎」と呼びます。皮膚が赤くなり、ブツブツや水ぶくれができることもあり、強いかゆみが特徴です。アトピー性皮膚炎、かぶれ(接触性皮膚炎)、乾燥性皮膚炎などが代表例です。
湿疹を引き起こす2つの要因として、刺激の強い物質に触れる「外的要因」と、一人一人の体質や体調などの「内的要因」が重なり合って起こります。
「外的要因」には薬剤、化学物質、アレルゲン、昆虫、金属、日光、ゴムによる締め付けや圧迫、カビ、細菌、気候変動などがあります。「内的要因」にはアレルギー体質、アトピー素因、内臓疾患、肌のバリア機能低下、皮脂や汗の量などが挙げられます。
湿疹の診断では、症状が続いている長さによって「急性湿疹」と「慢性湿疹」に分けて考えます。
「急性湿疹」は出始めてから数時間、または数日以内の湿疹で、多くのケースでは早期の治療によって改善します。「急性湿疹」は自然によくなることもありますが、治療しないで放置していると「慢性湿疹」になります。「慢性湿疹」になると患部がかたく、ゴアゴアするようになります。どちらも治療方法は基本的には同じですが、慢性湿疹の方が完治までに時間がかかります。
ですので、湿疹ができた方は早めの専門医への受診が改善の近道となります。
治療はステロイド剤や保湿剤の外用、かゆみを抑えるために抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤)の内服を行います。湿疹が上記のような「外的因子」で生じている場合は、その原因物質を避けることも大切です。
特に秋から冬、春先にかけての乾燥した肌に炎症が加わって湿疹を生じた状態です。
脚の外側や肘などによく起こり、強いかゆみを伴います。また皮膚の表面は細かいシワになり、ひどくなるとさざ波状や網目状となり、亀裂や紅班が見られます。
乾燥肌でなくても、お風呂でゴシゴシ洗ったり、頻繁な毛ぞりなどによって皮脂が不足することでバリア機能が低下します。その結果、アレルゲンや微生物が侵入しやすくなり、アレルギー反応や感染症を起こしやすくなります。
治療として保湿剤だけでは湿疹の治療にはなりません。症状にあった強さのステロイド外用剤で効果を抑えたあとに、その状態を保つために保湿剤を使用して下さい。
保湿剤とステロイド外用剤を一緒に使う場合は湿疹のある部分にステロイド外用薬、その他のカサカサの部位に保湿剤を塗って下さい。
頭や顔面、耳の後ろなどの皮脂の分泌が盛んな箇所にできる湿疹で、脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とも呼ばれています。原因として皮膚に常在するカビの一種「マラセチア」が異常に増殖すること、皮脂の分泌、肌質などが関係しています。
上記のような皮脂腺が発達している箇所に赤み、かゆみ、皮むけなどの症状があります。頭皮に炎症が起こると皮膚がはがれ、フケのようになります。
治療として抗アレルギー剤(抗ヒスタミン剤)内服、ステロイド外用、カビが原因と考えられているため抗真菌薬を使用することもあります。また日常生活では石鹸やシャンプーを使用し、特に頭皮はガリガリ洗うのではなくて愛護的に皮脂を落とすようにもみ洗いしましょう。
汗疱とは手のひらや足の裏などに2~5mmほどの小さな水ぶくれや皮むけが突然生じる皮膚疾患です。春から夏までの汗をかくのにまだ慣れていない時期におこることが多いです。ゴム手袋や靴のむれなどによって冬場でも発症します。
よく水虫と間違われて治療され、当院に受診される方を多くみかけます。
治療は湿疹に準じた治療をおこないます。水虫とおもって治療してもなかなか治らない方は早めに当院を受診下さい。
皮膚には汗腺(汗を出す腺)、脂腺(皮脂を出す腺)、毛髪、爪の組織があります。それらを総称して皮膚付属器と呼びます。
にきびは多くの人が経験するとても身近な皮膚疾患です。特に10~30才代の世代に多く、顔、胸、背中、おしりなどに好発する毛穴に一致した炎症または非炎症性丘疹です。面ぽう(コメド)といわれる、毛穴の詰まった状態から、炎症を起こした状態の紅色丘疹(赤いブツブツ)や膿をもつ膿疱に進行します。
大人のにきびは、食生活の乱れ、ホルモンバランスの乱れ、睡眠不足、紫外線、ストレスや生活環境など、様々な要因が複雑に絡み合ってできることが多く、治りにくく、再発しやすい特徴があります。炎症がひどくなると、色素沈着や赤み、陥凹(へこんんだ状態)が残り、にきびあとになってしまいます。
治療は、上記の悪化要因をケアしながら、症状、体質にあわせて以下を組み合わせます。
保険適応としては
ビタミン内服、抗生物質の内服、抗生物質含有軟膏外用、アダパレンゲル外用、過酸化ベンゾイル外用、漢方薬、イオウ含有ローションなどです。
自費診療としては
ケミカルピーリング、イオン導入、レーザー治療(レーザーフェイシャル、IPL、フラクショナルレーザーなどがあります。
にきび症状でお悩みの際は、放置せずにご相談下さい。
汗疹とは、大量の発汗によって生じる皮疹のことです。一般的にあせもと呼ばれるもので、小さな水疱や丘疹が多発します。汗は皮膚の中にある細い管(エクリン汗腺)を通って皮膚の表面に分泌されます。汗疹は何らかの原因で汗管が詰まることで、生成された汗が正常に分泌されず、皮下にたまることが原因となって発症します。
症状としては数ミリ程度の水疱ができ、その後、炎症をおこすと、赤みとかゆみがおこります。
汗疹が慢性化すると湿疹に移行したり、搔くことにより細菌感染を起こして膿疱を形成したりすることもあります。あせもを予防するためには、こまめに汗を拭き取ることはもちろん、室内は温度調節をして高温多湿を避けたり、汗をかいたら着替えたりすることも大切です。
治療は適度なステロイド外用剤を使用しますが、細菌感染している場合は抗生剤外用を使用します。症状が悪くなる前に受診して下さい。
多汗症には全身に汗が増加する全身性多汗症と体の一部に汗が増える局所性多汗症があります。全身性多汗症には特に原因のない原発性と感染症、内分泌代謝異常や神経疾患に合併するものがあります。
局所性多汗症は手のひら、足のうらや脇に多量の発汗がみられる疾患です。この病気は社会的にあまり知られていないため、本人が病気と認識していない場合や家族や友人に理解されず社会的に苦痛を受けている患者様は多いと思われます。
治療として従来は塩化アルミニウム製剤の外用やボツリヌス毒素注射療法が主体でしたが、
近年では、9歳以上の原発性のわきの下の多汗症の方や、12才以上の原発性の手のひらの多汗症の方に、交感神経から汗を出す伝達物質の作用部位を抑える治療薬が保険診療で処方できるようになりました。ご相談下さい。
酒さとは、主に中高年の顔面(特に眉間、鼻、頬)に好発し、発赤と毛細血管拡張が数か月以上持続する慢性炎症性疾患です。症状に、ニキビに似た丘疹、膿疱が生じることがありますが、ニキビと異なり面ぽう(コメド)はみられません。
酒さの原因は未だ判明していませんが、紫外線、ストレス、睡眠不足、飲酒、刺激物摂取、毛包虫感染などの外的因子に対する感受性が高まり、炎症や血管増生をきたすと考えられています。
治療として保険適応となるのは、内服抗生剤や、主に皮膚の凹凸に対してメトロニダゾール外用、イオウ製剤の外用などです。
円形脱毛症は、突然、円形に髪の毛が抜けてしまう脱毛症のことです。
1か所だけでなく、複数個所で脱毛したり、頭皮全体など広い範囲の髪の毛が抜けることもあります。ゆっくり進行していく薄毛とは異なり、突然髪の毛が抜けてしまうのが特徴です。自然に治ることがほとんどですが、脱毛箇所が気になるのに放置したりすると、それがストレスとなって症状を悪化させてしまうことがあります。
円形脱毛症は重症化すると、頭皮だけでなく、眉毛やまつ毛、体毛と全身に症状が広がることがあります。原因は明確にはわかっていませんが、自己免疫異常、遺伝、アトピー素因、ウイルス、ストレスなど発症しやすい体質にいくつかの原因が引き金となって発症されると考えられています。
治療は内服療法、ステロイド外用療法、ステロイド局注療法、赤外線照射療法、紫外線療法、冷却療法などです。
重症化すると治療が長期化するなど完治が難しくなるため、早めに受診して下さい。
蜂窩織炎とは皮膚とその下の組織に細菌が感染し、炎症が起こる病気です。
蜂巣炎(ほうそうえん)ともいいます。はじめに患部の皮膚に赤み、腫れ、痛みが出現し、急速に広がります。発熱、熱感、悪寒、倦怠感などを伴うことも多くあります。脚のすねの部分や足の甲に多く発生しますが、他の部位に起こることも多いです。通常は同時に複数の部位に発症することはありません。
検査として、病歴聴取、患部や全身の診察を行い、症状のひどい場合は炎症の程度をみるために血液検査を行います。血液検査では通常は白血球やCRP(炎症反応の数値)が上昇しています。
治療としては患部の冷却(アイシング)や脚の場合は患肢の挙上、安静の励行を指導し、抗生剤内服や点滴を行います。皮下に膿がたまっている場合は局所麻酔下に切開し排膿処置を行うことがあります。
軽症の場合は前述治療で7日から14日間で軽快しますが、発熱、倦怠感、関節痛など全身状態伴う重症の場合、糖尿病がある方や、ステロイドなどの免疫を抑制する薬を服用している方、抗生剤内服でなかなか改善しない場合などは入院させて点滴で治療します。
早期の治療が重要になりますので早めに受診して下さい。
丹毒はおもに顔(とくに頬)に生じることが多く、顔面におこる蜂窩織炎のことです。形のはっきりした紅斑が広がります。触れると痛みと熱感を伴います。発熱、全身倦怠感を生じ、腎炎に至ることがあります。
原因は溶連菌の感染によるものが多く、治療は、蜂窩織炎と同じく、患部の冷却と抗生剤の全身投与を行います。これも早期の治療が重要となります。早めに受診して下さい。
パルトネラ・ヘンセレという病原体による人と猫との共通感染症です。病原体を保有している猫にひっかかれたり、傷口をなめられることで感染します。日本では1953年に初めて発生が報告されました。
症状は主にリンパ節炎で、猫にひっかかれたり、咬まれたりした3日から10日後に傷口の腫れ、その後1週間から2週間経ってリンパ節の腫れがみられます。ほとんどの人は発熱、悪寒、倦怠感、食欲不振、頭痛等の症状が出現します。
自然に治ることが多いですが、治るまで数週間から数か月かかることがあります。
治療は抗生剤の全身投与を行います。
ヘルペスは単純疱疹ともいい、単純ヘルペスウイルス(HSV)による感染症です。
「熱の華」といわれ、潜伏しているウイルスが、風邪や疲れなどで免疫が下がることにより、再活性化して症状がおこります。
口唇の周囲(口唇ヘルペス)もしくは外陰部の周囲(性器ヘルペス)に水疱ができます。お尻に繰り返し水疱がでることがありますが、性器ヘルペスと同じ扱いです。
口唇ヘルペスの場合は、抗ウイルス薬を5日間内服するか抗ウイルス薬外用で治療します。性器ヘルペスの場合も、抗ウイルス薬の内服を行います。
頻繁に再発を繰り返すときは、前述のような短期投与もありますが、1日1錠を1年間くらい内服して性器ヘルペスの発症を防ぐとともに、単純ヘルペスの量も減少させる、という治療法も健康保険で認められています(バラシクロビルのみ)。
是非ご相談下さい。
帯状疱疹は水痘・帯状疱疹ウイルスによる感染症です。水痘(みずぼうそう)に以前かかった方は、ウイルスが潜伏感染しており、免疫力が落ちたきっかけで神経に沿って発症します。
通常は、頭から足まで体のどこかに、片側だけ赤みと水ぶくれがでてきます。初期は発疹や水疱はみられず、痛みやかゆみが先行することがあります。また痛みがあまりない場合や、後から痛みが出てくることもあります。
痛みは人それぞれで、ピリピリ、ズキズキ、鈍い痛み、夜も眠れない激しい痛みと表現されます。顔に生じた場合、目の障害や顔面神経麻痺、内耳障害によるめまい、耳鳴りなどが起こることがまれにあります。多くは、皮膚症状の改善とともに痛みは消失してきますが、人によっては1か月、数か月、1年、何年も痛みが続く「帯状疱疹後神経痛」という後遺症が残ることがあります。
よって帯状疱疹はなるべく早く皮膚科専門医を受診し、早期に治療することが大切です。
治療は抗ヘルペスウイルス薬の内服か入院して点滴投与です。最近はお薬がよくなってきたので、帯状疱疹で入院する患者様はめっきり減りましたが、
重症の方はやはり入院が必要な場合もあります。
帯状疱疹後神経痛に対しては慢性疼痛専用の内服薬を使用しますが、それでも軽快しない場合はペインクリニック(痛み緩和を専門とする麻酔科)に紹介しています。
50歳以上の方で帯状疱疹にかかる前に帯状疱疹の予防注射が受けられます(自費診療)
尋常性疣贅は、いわゆる「いぼ」の一種です。
ウイルス性疣贅とも言いますが、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による感染症です。まず、視診やダーモスコピーを使用し診断します。時に鶏眼(うおのめ)や胼胝(たこ)と見間違われて治療されている患者様を多くおみうけしますが、ダーモスコピーを使用すると簡単に判別がつきます。
日本皮膚科学会が発表している尋常性疣贅の診療ガイドラインでは、推奨度の比較的高い(Bランク以上)治療は液体窒素療法(A)、電気凝固(B)、レーザー(B)、サリチル酸外用(B)、ヨクイニンエキス内服(B)接触免疫療法(B)になります。
当院では第一選択として液体窒素療法、そしてヨクイニン内服をよく行っております。難治例の場合は他の方法も施行しています。
いぼはウイルス性ですので、裸足で歩き回ると家族にうつる可能性があります。また気になるからといって手で触っていると手にもうつって、手足に無数のいぼを作って来院される方をよくみかけます。怪しいなと思ったら、早めに来院し治療をうけることをお勧めしています。
性器に“いぼ”のようなものができた場合、尖圭コンジローマが疑われます。尖圭コンジローマは性感染症の一つであり、性行為や性行為に似た行為によって感染するヒト乳頭腫ウイルス(HPV)による感染症です。
尖圭コンジローマに感染すると、パートナーにうつしたり、免疫力が低下することからHIV感染率も高まるといわれています。そのため、感染しているかもしれないと思う場合は、はずかしがらず、すぐに医療機関に受診することをお勧めします。
しかし、潜伏期間が長く(1か月~数か月)症状が“いぼ”以外に自覚症状が少ないことから気づかれにくい感染症です。放っておけば不妊の原因になることもあるので、異変を感じたらすぐに治療を受けましょう。
当院では男性のみの尖圭コンジローマの診断、および治療として液体窒素療法や専用の塗り薬を保険治療で行っております。難治の方はレーザーまたは電気メス(自費診療)での焼却療法も施行しています。できるだけ個数の少ない時の受診をお願いします。
水虫は、白癬菌(はくせんきん)というカビの一種が足の皮膚に入り込んで発症する病気です。白癬菌が増殖しやすい夏に症状の悪化がみられます。足白癬は趾間(しかん:指の間)型、小水疱(しょうすいほう:水ぶくれ)型、角質増殖型のタイプに分類されます。趾間型は、足指の間の皮膚がふやけたように白く濁り、じくじく、かさかさ、赤み、水ぶくれなどが生じます。小水疱型は、土踏まずや足指に水ぶくれや細かい皮むけが生じます。角質増殖型は、踵(かかと)を中心に足裏の皮膚が厚くなり、ひび割れたり、粉をふいたりした状態になります。冬に乾燥やひび割れを起こしやすくなります。これらのタイプが混在することもありますし、かゆみがないこともあります。
治療は外用薬が第一選択です(種類はいろいろあります)。難治性の場合は内服させることもあります。塗る期間は角層の厚さによって異なり、指(趾)間型では2か月以上、小水疱型(汗疱型)では3か月以上、角化型では6か月以上が目安とされています。
当院では顕微鏡検査で本当に水虫かどうかを確認し、症状にあった外用の塗り方を指導しています。市販薬などで治りの悪い水虫がある場合は是非受診して下さい。
爪が白く、あるいは黄色くなっていたり、爪が厚くなっている方は爪水虫かもしれません。
自覚症状が少ないため、放置されていることが多い疾患です。放置していると家族内で感染したり、爪が分厚くなり切りにくくなりますので、治療が必要となります。
まずは顕微鏡検査にて本当に爪水虫かどうかを確認します。
治療としては、爪白癬の場合は、病型にもよりますが、内服薬が第一選択で、何らかの理由(肝臓が悪いなど)で内服できない場合は、外用薬(2種類のみ)を用います。
内服薬にはイトコナゾール(商品名:イトリゾール)、テルビナフィン(商品名:ラミシール)、ラブナゾール(商品名:ネイリン)になります。爪白癬専用の外用剤としては、エフィナコナゾール(商品名:クレナフィン)、ルリコナゾール(商品名:ルコナック)になります。
爪白癬は長期に治療がかかります。途中であきらめないように受診することが大切です。
梅毒は梅毒トレポネーマという病原体による感染症です。近年、「梅毒」の感染者が急増しています。
梅毒は主に性行為によって感染し、感染に気づきにくいことから治療の遅れや感染拡大につながりやすい危険な感染症です。性的接触後、いつもと違う症状が現れるなどして、梅毒に感染しているかどうか不安なときは早めに受診して下さい。
具体的な皮膚症状としては、感染後約3週間で、主に陰部、口唇部、口腔内、肛門等にしこりや潰瘍ができることがあります。股の付け根の部分のリンパ節が腫れることもあります。(梅毒Ⅰ期)この時期は他の人に感染させやすいです。治療をしないで3か月以上経過すると、病原体が血液によって全身に運ばれ、手のひら、足の裏、体全体にうっすらと赤い発疹(ばら疹)が出るなど、様々な皮疹が出ることがあります。(梅毒Ⅱ期)皮疹は治療をしなくても数週間以内に消え、また再発を繰り返すこともあります。しかし、適切な抗菌薬で治療しない限り、病原体である梅毒トレポネーマは体内に残っており、梅毒が治ったわけではありません。
感染後、数年すると皮膚や筋肉、骨などにゴムのような腫瘍(ゴム腫)が発生することがあります。また心臓、血管、脳など複数の臓器に病変が生じ、場合によっては死に至ることがあります。(晩期顕性梅毒)
また、妊娠している人が梅毒に感染すると、胎盤を通じて胎児に感染し、死産、早産になったり生まれてくる子どもの神経や脳などに異常をきたすことがあります。(先天梅毒)梅毒に感染したかどうかは、専門医師による診察と血液検査(抗体検査)でわかります。
検査で陽性が出た場合は本人だけでなく、パートナーも検査することが大事です。
治療は適切な抗生剤内服を行います。早めの受診をお願いします。
非常に痒いポツポツとした赤い皮膚の盛り上がり(丘疹)がバラバラと散らばってできる病気です。すねのあたりやお腹、背中などに限られるタイプから体中にできるタイプまで様々です。またおのおのの丘疹が1週間程度で治ってしまう急性のものから、何か月も治らず茶色の硬いイボのようになってしまう慢性のものまであります。
原因は今のところはっきりとわかっていません。虫刺されがきっかけのことや、アトピー性皮膚炎のようにアレルギーが関係していたり、腎機能が悪い方にも多いですが、そうでない人もたくさんみられます。またまれに内服薬が原因になっている場合もあります。痒疹のタイプによっては長い間引っ掻き続けてしまうということも一因になっていると考えられます。
非常に治りにくい疾患ですが、治療としては、多くはステロイド外用薬とかゆみに対して抗ヒスタミン剤が用いられます。体中にある場合は紫外線療法を行うことがあり、かゆみに対してもよく効きます。痒いイボのようなかたまりがなかなか消えないときには液体窒素療法も行います。
その他にビタミンD3軟膏が有効なこともあります。
しかしステロイド外用薬と抗ヒスタミン剤(抗アレルギー剤)以外は保険適応外の治療となります。症状の非常にひどいときにステロイド薬や免疫抑制薬の内服をすることもありますが、長く飲み続けることは望ましいことではありません。
一方最近になってアトピー性皮膚炎治療薬として知られるデ゙ュピルマブ(皮下注射薬、自己注射可能)が結節性痒疹に保険適応となりました。費用がかかるのが難点ですが、従来の治療法に比し高い効果が期待できます。
疥癬とはヒゼンダニ(疥癬虫:かいせんちゅう)という大変小さなダニが人の皮膚に寄生しておこる、かゆみを伴う皮膚の病気です。
この病気には通常疥癬と呼ばれるものと他の人に感染する力の強い角化型疥癬(かくかがたかいせん)と呼ばれる2つの種類の病型があります。ヒゼンダニは、たいへん小さなダニなので直接目でみることはできません。卵からかえって幼虫になり、若虫、そして成虫(オス、メス)になります。卵は3~4日でかえり、そのサイクルは10~14日です。
人に寄生すると、手のひら、指の間、肘、わきの下、足首や足の裏、外陰部などに疥癬トンネルと呼ばれる横穴を堀り、卵をうみつけます。ヒゼンダニは人の体温が一番生活に適しており、人の肌から離れた場合は長く生きられません。また高熱や乾燥に弱く、50℃以上の環境に10分以上さらされると死ぬことがわかっています。
特に角化型疥癬は非常に感染力が強いため、短い時間の接触、衣類や寝具を介した間接的な接触でも感染します。また皮膚からはがれ落ちたあか(角質)にも多数のダニが含まれており、感染の原因になることがあります。
免疫力が低下した高齢者に発症しやすく、施設などで集団感染することがあり、介護従事者にも感染することがあります。
診断は皮疹部分を一部けずって、虫体や卵を顕微鏡検査で確認します。治療はイベルメクチンという内服薬があり、患者様の体重にあわせて1回内服後、1.2週間後に再度顕微鏡検査して虫体が確認されれば再度投与します。かゆみに対しては抗アレルギー剤の内服を行います。
疥癬が疑われる方は診察室を分けるなどの対応が必要となりますので、受診される前にあらかじめご連絡下さいますようお願いします。
日本ではマダニ類が46種類ほど知られており、成虫の体調は2~8mmの大型のダニ類です。
マダニは主に林の中やその周囲、あるいは河川敷などに見られ、草やササなどの葉に付着して待機しています。そこに動物や人が通ると、その体や衣服に乗り移ります。そして体表面を動きまわって吸着する部位を探し、口器を皮膚に刺して吸血を開始します。マダニに刺された部位は痛みやかゆみなど自覚症状がないことが多く、虫体が吸血して、かなり大きくなってからようやく気づく例が多いようです。
急に黒いホクロができた、何か虫のような黒いものが付いている、何かついていると思い除去したが、調べたらマダニなので心配になった、などで来院される方が多いです。マダニ類のごく一部は、感染症の原因となる病原体を保有していることがありますが、実際にはその可能性は低いので過剰な心配は不要です。
ただ咬まれているのがわかってから、熱が出る、全身状態がおかしいと思ったら早めに医療機関に受診して下さい。
治療ですが、マダニは吸着して3日以上経過すると、マダニの口器が皮膚組織と固く接着しているため除去が困難になります。その場合無理に引っ張ると皮膚内に口器がちぎれて残ります。マダニ虫体の除去が困難と判断された場合は、局所麻酔をして、皮膚ごと切除する必要がありますので、皮膚科を受診して下さい。
水疱症は、皮膚に水疱、いわゆる「みずぶくれ」やびらん(ただれ)を生じる病気をまとめた総称です。ウイルス性、細菌性疾患や、やけどなど物理的刺激による水疱は除きます。免疫の異常によって生じる自己免疫性のものと、遺伝子の異常によっておこる先天性のものとで、
病気を引き起こす原因によって2つに大別されていますが、ここでは自己免疫性水疱症について取り上げます。
私たちの体は細菌やウイルスといった外敵から守るために、自己と異なる異物を認識し、排除するというしくみを備えています。自己免疫疾患とは、その免疫系が自分自身の正常な細胞や組織に対して攻撃を加えてしまう疾患です。
自己免疫性水疱症は自分の皮膚の表皮、あるいは粘膜の上皮にある成分を攻撃する抗体が体内で作られてしまい、その結果、細胞がバラバラに離れて皮膚や粘膜に水疱を生じる病気です。人から人へうつる病気ではありません。自己免疫性水疱症は水疱が起こる深さによって天疱瘡(てんぽうそう)群、類天疱瘡(るいてんぽうそう)群に分かれます。
天疱瘡群の大部分は尋常性天疱瘡、落葉状(らくようじょう)天疱瘡です。
尋常性天疱瘡は最も多いタイプの天疱瘡です。口腔粘膜にびらんが生じて、痛みを伴い、食事がとれなくなることがあります。また、全身に発赤や水疱がたくさん現れ、皮膚の表面から大量の水分が失われたり、感染を起こしたりする場合があります。
落葉状天疱瘡では、背部や顔などを中心に落ち葉が落ちたような、浅い水疱とびらんができますが、粘膜の症状はみられません。好発年齢は40~60歳代でやや女性に多い傾向があります。
類天疱瘡群では、自己抗体による水疱が表皮または粘膜上皮下で起こります。代表的な疾患である水疱性類天疱瘡では緊満性水疱(膜が厚い丸々としたきれいな水疱)が多発するのが特徴で、水疱ができる前に皮膚が赤くなり、かゆみを伴うことが多いです。
類天疱瘡の患者様は70歳以上の高齢者に多く、高齢化により、さらに患者様が増えることが予想されます。
診断は、視診、血液検査、組織検査を行います。血液検査は血中の自己抗体を検出するために行います。
組織検査は診断を確定するためには不可欠です。水疱が表皮のどの部分に生じているか診断します。また蛍光抗体直接法という検査により、皮膚に抗体が沈着しているかどうかを観察します。
治療は自己抗体の産生と働きを抑える免疫抑制療法が必要となります。現状ではステロイド内服または点滴が中心です。
軽症の場合は外来通院でも可能ですが、通常は高容量のステロイドから開始するため、入院が必要となります。水疱の新生がなくなり、病気の勢いが落ち着いてきたら、ステロイドの量を徐々に減らしていきます。ステロイド治療を開始してしばらくしても病勢が制御できない場合は、
ステロイドパルス療法や血中から抗体を除去する血漿交換療法、免疫グロブリン大量療法などが必要となることもあります。
一般的には尋常性(じんじょうせい)乾癬のことをいいます。
銀白色の鱗屑(りんせつ:皮膚の粉)を伴い、境界の明瞭な盛り上がった紅斑(赤い斑点)が全身に出現する病気で青年~中年期の発症が多く、よくなったり、悪くなったりを繰り返します。
大きさや数、形は様々で、発疹が癒合し大きな病変となることもあります。爪の変形や関節炎を伴うこともあります。刺激を受けやすい部位にできやすく、頭部、ひじ、ひざ、でん部、下腿などに多く認められます。かゆみは半数程度の方にみられますが、内臓に障害を及ぼすことはありません。
また細菌や真菌(カビ)による病気ではないため、決して他の人に感染することはありません。
はっきりとした原因は解明されていません。しかし、最近の研究では乾癬になりやすい体質の人に、気候やケガや感染症、ストレスや不規則な生活などからくる刺激(外的要因)に糖尿病や高脂血症、肥満などの体内の変化(内的要因)が加わることで発症するといわれています。
乾癬は慢性で軽快と悪化を繰り返します。病気の程度、状況などに応じて治療法を選択します。
当院では抗アレルギー剤内服、ステロイド剤外用、活性型ビタミンD3軟膏外用を中心に、紫外線療法を併用し、PDE4阻害剤、エトレチナート、免疫抑制剤内服などを追加しています。原因が解明されていないため、症状を緩和させる治療が中心です。
症状の程度によって治療も異なってきますので、まずは皮膚科専門医への診察をお勧めします。
掌蹠膿疱症は手のひらや足の裏を中心に膿のたまった皮疹(膿疱)が多数みられる慢性疾患のことです。小さな水ぶくれや赤い発疹ができ、だんだん拡大して膿疱を形成します。発症年齢は30~50歳代が多く、有病率は40~60歳代の間で高くなっており、特に女性によく発症します。
また10%~30%の症例で鎖骨や胸の中央部をはじめ、全身の関節が痛くなる掌蹠膿疱性関節炎がみられます。爪に症状が現れると爪の下に膿疱などができたり、爪が変形し、はがれて浮いてきたりします。手のひらや足裏の他にも膝やすね、頭部に発現することもあります(掌蹠外皮疹)。
なお、膿疱を形成しますが、膿の中には細菌や真菌(カビ)は存在しないため、他人に感染するといった心配はありません。
掌蹠膿疱症の原因はまだ解明しておらず、患者の70%~80%は検査を行っても原因を特定できていないというのが現状です。ただし、病巣感染(扁桃炎、虫歯、副鼻腔炎など)や歯科金属などの金属アレルギーが誘因となっているケースがあるので、こうした原因が特定できれば治癒できる可能性が高いと考えられています。このほか、掌蹠膿疱症患者の約80%が喫煙者というデータがあります。
治療はステロイドの外用や活性型ビタミンD3外用薬を中心に、紫外線療法、レチノイド内服、免疫抑制剤の内服などを行う場合があります。水虫や異汗性湿疹と間違って治療されている場合もあり、早めに皮膚科専門医にご相談下さい。
膠原病とは様々な臓器障害と免疫異常を特徴とする全身性炎症性疾患です。発熱など全身症状に加え、皮膚、関節、腎、肺、神経組織、心、筋などが同時にまたは時期を異にして障害され、複雑、多彩な臨床像を呈します。皮膚症状でみつかる、あるいは予想できる膠原病も多く、それを見逃さないことが大切です。
たとえば、発熱や関節痛、筋肉痛、全身倦怠感、易疲労性、体重減少などの全身状態に加え、顔面に蝶が羽を広げたような紅斑がでる、指先に紅斑がある、爪のまわりが赤い、背中にじんましんのようなものが出る、指先が固くなり潰瘍ができる、脚に紫色の斑ができる、目や口が乾燥しやすくなったなど、皮膚科専門医がみれば膠原病やその類縁疾患を疑う所見が他にも色々あります。
検査として、膠原病を疑えばまずは一般的な血液検査とリウマチ因子、抗核抗体の量をチェックします。その量が高ければ、何十種類もある膠原病の中から全身症状や皮膚所見から疑わしいその膠原病に特有の抗体をさらに検査します。
治療は膠原病内科や膠原病治療を行っている皮膚科がある大学病院や総合病院へ紹介します。
当院は大阪府の難病指定医に登録されています。気になる症状があればご相談下さい。
尋常性白斑は皮膚の色がぬけてしまい、脱色素斑ができる皮膚疾患です。「白斑」には遺伝による先天性のものと後天性のものがあり、尋常性白斑は後天性のものとなります。痛みやかゆみはありませんが、尋常性白斑はまだらに皮膚の色がぬけてしまうため、外観的な問題で悩まれる患者様が多い症状です。シミの原因としても知られるメラニン色素は、紫外線から皮膚を守るために産生されます。
尋常性白斑は、このメラニン色素を作り出すメラノサイトに異常がおこり、メラニンが作られなくなることで生じます。最初は親指の先くらいの白斑ができ、症状が進行すると、白斑が大きくなったり、症状が全身へと広がることもあります。その原因は明確にはわかっていません。自己免疫疾患の一つとも言われ、細菌やウイルスを攻撃する免疫機能が、何かしらの要因でメラノサイトを攻撃してしまうことで発症すると考えられています。他にも、過度のストレス、やけど、日焼けなどの刺激によって起こるとも言われています。
治療は炎症を抑えるステロイド剤やビタミンD誘導体、免疫の過剰な働きを抑える免疫抑制剤などの塗り薬や紫外線療法を施行しています。受診の上、ご相談下さい。